歯の健康が全身の健康や
QOLに
影響するのを
ご存知ですか?
「歯が痛い」「噛みにくい」といった症状が出なければ、お口の健康を意識しない人も少なくありません。しかし、普段から、歯や口の中の健康にもっと関心を持ち、病気の予防に努めることが大切です。
歯の健康は、お口の中だけの問題でなく、全身の健康や健康寿命にも影響します。歯を失って噛めなくなると、さまざまな全身疾患のリスクを高め、QOL(生活の質)の低下を招く可能性があるのです。
歯の喪失が招く
5つの全身への悪影響
「噛む」という動作は、ただ食べ物を飲み込みやすくするだけではありません。噛むことは、脳を活性化したり、食欲をコントロールしたり、お口の健康を維持するなど、さまざまな効果があります。
そのため、歯を失って噛めなくなってしまうと、さまざまな悪影響が懸念されます。
歯を失ってしまったら、ブリッジ・入れ歯・インプラントといった歯を補う治療を行い、咀嚼機能を維持することが大切です。たとえ1本の歯であっても、抜けたままにしていると、他の歯や歯並びに悪影響を及ぼします。
歯を失うことがないように、病気の予防に努めるのはもちろん、歯を失ったら抜けたままにしないことが大切です。
全身疾患の
悪影響1認知症リスクが高まる
歯がほとんどなく義歯も使用していない人は、20本以上自分の歯が残っている人に比べ、認知症の発症リスクが約1.9倍に高まるという調査結果があります。
また、あまり噛めない人は、何でもよく噛める人と比較すると、1.5倍認知症の発症リスクが高まるというデータもあります。
認知症は、介護が必要となる原因となり、QOLの低下を招く疾患です。噛むことは、脳の血流量を増やし、脳を活性化しますが、噛めなくなると脳への刺激が減ってしまいます。このことが、認知症のリスクを高めることと深く関係していると考えられています。
全身疾患の
悪影響2脳血管疾患の発生リスクが高まる
よく噛むと、食欲が抑えられます。これは、咀嚼によって満腹中枢が刺激されることや食欲を高めるグレリンというホルモンの分泌を抑制することが関係しています。そのため、噛めなくなると肥満や生活習慣病のリスクが高まります。
生活習慣病にはさまざまな種類があり、そのほとんどが進行するまで自覚症状はありません。しかし、知らないうちに進行し、脳や血管、心臓にダメージを与えます。
噛めないことが招く肥満や生活習慣病は、命にもかかわる脳血管疾患につながるのです。
脳血管疾患のリスク因子は、食べ過ぎや肥満と密接に関係していることから、噛める歯を守り、よく噛んで食べ、食べ過ぎや肥満を防ぐことが大切です。
全身疾患の
悪影響3残っている歯も失いやすくなる
抜歯が必要になったら、その箇所を補うための治療(補綴治療)が必要となります。しかし、歯が抜けたまま放置してしまうと、歯並びの乱れを招きます。また、歯がなく噛めないことから、偏った噛み癖がつき、さらに悪い歯並び・噛み合わせを進行させてしまいます。
歯並びや噛み合わせが悪くなると、口の中が不衛生になりやすく、特定の歯に負担がかかると、その歯を失うリスクを高めてしまいます。
歯は、上下・両隣の歯と接触することにより、安定した位置を維持しています。「1本くらいなくても問題ない」ということはないのです。
全身疾患の
悪影響4胃腸に大きな負担をかける
よく噛んで食べると、食べ物が小さく粉砕され、消化しやすいかたちになります。さらに、咀嚼には唾液の分泌を促進する効果もあり、消化・吸収を助けます。唾液には、お口の健康を維持する働きもありますが、消化・吸収を助ける消化酵素としての働きもあります。
よく噛むことは、咀嚼によるこれらの働きによって、消化・吸収をスムーズにし、胃腸の負担を軽減します。
認知症はよく噛んで食べるために、十分な歯を維持することが大切です。よく噛んで食べることで、胃腸の負担を軽減でき、より食べ物の味を感じられます。
全身疾患の
悪影響5栄養状態の悪化と体力の低下
失う歯の本数が多くなるほど、咀嚼機能が低下しやすくなります。硬い食品を避けるようになり、噛まなくても食べられる、やわらかい食品ばかりを摂取するようになります。これにより、摂取する食品の偏りや栄養状態の悪化を招いてしまいます。
栄養バランスが乱れた状態が続くと、筋肉量の低下を招き、運動能力の低下や運動量・体力の低下を招きます。このことが、さらなる栄養状態の悪化や体力の低下を招き、悪循環に陥る場合もあります。「食べる」ということは、生命維持において欠かせません。栄養を摂取するという面だけでなく、食べる楽しみを感じることは、生きる力の源でもあります。
栄養状態や体力を維持するため、そして、QOL低下を防ぐため、「噛める歯」を守り、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
歯周病は全身疾患と
深く関係しています
歯周病は日本人の8割が罹患しているとも言われていますが、近年は低年齢化が指摘されています。子供の4割に、軽度の歯周病(歯肉炎)症状がみられたという報告もあります。今や歯周病は、大人も子供も注意しなければならない病気となっているのです。
歯周病の恐ろしさは、歯を失う原因となることだけではありません。歯周病は、次のような全身疾患とも関連しています。
歯周病と関連する主な全身疾患
栄養状態の悪化と体力の低下
歯周病は糖尿病と深く関係していて、糖尿病の「第6の合併症」とも呼ばれるほどです。糖尿病の人は歯周病になりやすく、糖尿病と歯周病が相互に影響し合うことがわかっています。歯周病になると糖尿病の症状が悪化しやすく、歯周病の症状改善が糖尿病の改善につながることがわかっています。
つまり、歯周病と糖尿病のどちらも治療しなければ、どちらの症状も改善しないのです。
全身の健康とQOLの向上に
予防歯科が大切です
先に述べた通り、口の中の健康は全身の健康、そしてQOL(生活の質)に大きく影響しています。歯を失うことは社会性にも大きく影響するため、心の健康にも悪影響を及ぼしかねません。 噛むための歯を守ることが、QOL、さらには健康寿命を延ばすことにつながります。歯を守っていくための取り組みが早い段階から必要であり、予防歯科が大変重要となってきます。